友達だと思って た

どこの国にあっても、パン屋は朝早くからパンを焼いており、町の人々に朝食用の焼きたてパンを売っている。
ジェシカの家の近所のパン屋クランも、今朝は朝早くから起き出し、パンの生地をこねていた。
長年の修練の結果、空気が入り込まないように丁寧に慎重に、それでいてすばやくパンの生地がこねあがっていく。
と、突然、店の方から大きな音が・・・・・・
驚き、慌ててこねるのを中断して店の中の様子を見にいってみると、奥の掃除道具入れの扉が開いており、箒やモップなどの掃除道具類が床に散らばっていった。
毎朝(といってもまだ真夜中だが・・・・・・)、起きだすと最初に店を綺麗に掃除し、キチンと掃除道具をしまい、掃除道具入れの扉がしっかりと閉じているのを指差し確認するクランだったので、こんなことが自然に起こるなんてありえない。
ってことは何者か侵入者がいて、掃除道具入れを荒らしたのか?

でも、今、店の表側のドアはカギがかかっており、窓もよろい戸が閉まっている。出入りできる入り口は作業場に通じるドアだけだが、今クランが入ってきたばかり。
ってことは、犯人はまだこの店の中に?
ということで、すこし怯えながらも(本人は捕まえてやる気まんまんでと話していたようだが)店中をあちこち探しまわったのだが、結局、掃除道具入れを荒らした犯人を見つけることはできなかったらしい。
「きっと姿のない犯人なんだよ。事件だよ! ミステリーだよ!」
「ハハハ、まさか、きっと猫か何かが暴れたんだよ」
「でも、クランおじさんのところは猫なんて飼ってないもん!」
「でもなぁ~ 姿がないなんて、ちょっと信じられないなぁ~」
「あぁ! ジョゼフィーヌちゃん、ジェシカのこと疑ってるぅ!」
「え? あっ? そんなことないよ。そんなこと」
「ウソだぁ~! ジョゼフィーヌちゃんのこと、私、友達だと思って
たのに! ショックぅ~! しくしく」
ジェシカが大げさに泣きまねをしてみせる。けど、その途端。

「え?」
「キャァァ~~~~ 今のなし。聞いてないよね。うん、聞いてない!」
「えっと、なに、お腹鳴ったの?」
「キャァァ~~」
ジェシカは恥ずかしげに両手で顔を隠すのだった。
パン屋のクラン、つい犯人探しに夢中になりすぎて、パンこねが遅れ、焼きの作業にも影響し、パンの焼き上がりが店の開店に間に合わなかったそうな。
「おかげで、今朝はパン食べられなかったよぉ~ 朝食抜きだよぉ~ 腹ペコだよぉ~」
そうして、ジェシカはまた盛大にお腹の虫を鳴らした。
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