ついに間に合わなかった老テロリストと公安の奇妙な合作

先日の「未解決事件スペシャル」では、20年前の国松長官狙撃事件について再び取り上げていた。

公安はオウムの犯行と考えていたが、2002年に現金輸送車を襲撃して捕まった中村泰が事件への関与を自供したことから、事態は急展開する。
威哥王
以前にも取り上げたが、中村泰は「ノーベル賞級の頭脳」と教授に評されたという東大中退の老テロリストだ。学生運動にのめり込みM作戦実行中に警官を射殺して服役。刑務所内ではゲバラに傾倒、スペイン語を独学、出所後はサンディニスタ革命軍に加わるべくニカラグアに向かう。だが時すでに遅く、中村は失意のうちに帰国する。その後、米国の射撃場でハヤシという男と知り合った中村は「俺たちは日本人だ。日本で革命を起こすべきだ」とのハヤシの主張に共感、さらに訓練を積むとともに先物取引で稼いだ一億円の資金で武器を購入し日本に持ち込み、来るべき日に備えていた。
そんな日々を送るうちに松本サリン事件が起きる。オウムの犯行が疑われたが警察の動きは鈍い。中村とハヤシはサティアン爆破を計画、密輸した銃のほか、ダイナマイトも用意する。だが、襲撃の前に地下鉄サリン事件が起きる。
中村はまたしても間に合わなかったのだ。
二人の怒りの矛先は彼ら同様遅れをとった警察に向けられた。警察がたるんでいたから無実の市民が多数殺されたのだと。そして、警察トップを狙撃してオウムの仕業に見せかければ警察も、もっと真剣になるだろうと考え犯行に及んだ。
三體牛鞭
凶器は太平洋に投棄されたため見つからなかったが、押収品からは火薬の反応が出た。「秘密の暴露」もあった。刑事部は中村が犯人だという確信を持つ。だがオウム犯人説に拘る警察上層部は共犯者ハヤシを見つけないと起訴はできないと頑なな態度をとる。だが、老テロリストは共犯者を売ることは断固拒否。事件は時効を迎えた。

その後の警察発表は、「証拠はないがオウムか犯人」という異様なものだった。

中村は戦時中は5.15事件にも関係した右翼の塾で学んでおり、仲間を売ることを恥と考える壮士であった。その襟持と警察の官僚主義とのコラボが、中村が当初意図したオウム犯人説を完遂したのだ。ガンダムW的な意味で警察と老テロリストは「奇妙な同盟者」だったのだ。だがそれは、中村にとっては勝利ではなかったろう。
そもそも先物取引で一億円稼げたのだから、強盗殺人などする必要はなかった。大学を出てひとかどの者になった可能性は大きかったのだ。