「PCを使えない学生が急増」の問題点

「PCを使ったことがない」という新社会人がここ数年増えている。「若い人のほうがITに対してのスキルが高い」と思いがちだが、実際にはどうやらそうでもないらしいのだ。

【あいつはPCも使えないのか!】

 総務省の「平成24年通信利用動向調査」によると、「PC」の世帯普及率は75.8%となっているのに対し、「スマートフォン」の普及率は49.5%。この調査で見られるのは世帯対象であり、世代別、個人ではない。そこで、内閣府の「平成25年度 我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」を見ると、中学生までの「PCを所有している率」が諸外国に比べてかなり低い結果になっている。海外先進国の中学生の80~90%が自分のPCを所有しているのに対し、日本は約30%しか持っていないのだ。

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 いつから若者はPCを使わなくなったのだろうか。

 今の40~50代の大人たちが10代の1980年代、日本電気(NEC)製PC-8801、PC6001、PC9801、富士通FM-7を筆頭とした「マイコンブーム」(当時はPCという呼び名ではなかった)があった。10代の少年たちは雑誌に掲載されたプログラム(主にBASIC)を入力してゲームがしたいがために、親に頼んで高価なマイコンを購入してもらったものだ。

 もちろん、すべての40~50代がそうであったわけではない。あまり触れる機会のなかった人たちは社会人になってから、会社の研修などを通じてPCのスキルを磨いていった。当時はPCを使いこなせる人が少なかったので、会社でたびたび研修などが開かれていた。

 またアラサー世代は1990年代の「Windows 95、98、XPブーム」を経験している。学生時代にPCを買って、Wordの使い方などを習得した人が多い。

 しかし今、PCに代わりメインプレイヤーになったのが「スマートフォン」だ。30代までの大人たちが遊びの中で学んだPCのスキルを持って社会人になったのに対し、彼らは日常でPCを使っていない。文字入力もキーボードよりフリック入力なのである。

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 プライベートではスマートフォンで十分かもしれないが、企業では「PCを使って書類作成」という作業が加わる。社会人デビューを果たした直後にキーボード入力、WordやExcelでの書類作成という即戦力のスキルが問われるのだ。

 大事なことは、高校生や大学生のうちにPCに慣れ親しむ環境だろう。大学進学を機にPCを購入したり、親から買い与えられるというケースが多いはずだ。そこで、実際に大学生の現状はどうなのか、関係者に聞いてみることにした。

●PCを使いたがらない学生が増えている

 「最近の学生はPCを使いたがらない」というのは本当なのだろうか。そこで某私立大のA准教授に話を聞いてみた。Aさんは学生のPC使用状況をこう見ている。

 「学生はWordやExcelの検定試験に合格することが就職に有利になると思い込んでる感じですが、『レポートをWordで書いて提出してください』と言うと『手書きではダメですか?』と聞いてくる学生も少なくありません。スマホは生活の必需品なのに、PCは『できれば使いたくないモノ」なのかもしれません。

 大学からPCのアドレスが学生に配布されていますが、4年間で1度も使っていない生徒もいます。彼らのデフォルトはスマホで使うLINEなので、ウチの学部は仕方なくLINEを導入しました。例えば、履歴書の内容を修正するときには、手書きで書かれた履歴書をスマホで撮影し、LINEに添付して送ってくることもあります」

 そもそも学生はPCを持っているのだろうか。これについてもAさんはこう語っている。

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 「1人暮らしの学生は大学生になるときに親に買ってもらうようですが、多くの学生は『レポート書くくらいしか使わない』と言ってます。エンタメ系や情報収集はスマホやタブレットで済むので、PCの重要度が薄れて使わなくなっているのかもしれません。

 とはいえ、まだ持っている学生はいいほうでしょうね。学生になってから、ぼちぼち買い始める生徒もいますけど、バイト代をそこにそそぐのは優先度低い感じです。実家から通う子の中には、親のPCや大学のモノで済ませるという学生もいますから」

●PCスキルが乏しい原因

 Aさんが話すように、1人暮らしの学生は親にPCを買ってもらうケースは多いようだが、自らアルバイトで購入するという優先度は低いようだ。これを裏付けるように都内の私立大に通う19歳の女子大生・Sさんはこう話してくれた。

 「メールや調べ物もスマホで済むし、テレビもスマホで見られるのでPCは社会人になってから買えばいいかなと思ってます」

 「ノートPCは欲しいか?」と聞いてみると、「あったら便利だなと思うけど、バイト代で買うには高いし、親に相談したら『高いから今は買えない』と言われちゃいました。社会人になったら会社でも使うから必要だとは思っています」

 次に「PCの価格を知ってるか?」と尋ねると、「家電量販店などにスマホは見に行くけれど、PCは見に行ったことがないので分かりません。でも、10万円くらいしますよね? 友たちが持っているのでAppleの薄いPC(MacBook Air)は欲しいんです。でも高いんですよね?」

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 学生にも人気のMacBook Airが、彼女たちの「ノートPCの価格の基準」になっているようだ。確かにMacBook Airの価格は安くても約10万円はする。彼女たちの親の世代のPCの価格の概念も当時の15万、20万といった価格のままであれば、必然的に家庭でのPCの価格の解釈は高いままなのであろう。

 このような大学の現状、学生の認識であるのは、それまで学校や家庭でPCに触れる機会が少ないこと、欧米の先進国に比べPCやインターネットのスキルやリテラシー教育が乏しいことが原因だろう。多くの職業でPCを使うのが当たり前になってきた現在社会において、大人が子どもたちにPCを利用させ慣れ親しむ環境を与えてやることは、教育の一貫ではないだろうか。

 マイコン・PCで育った世代が教える、「インターネットは使い方を間違えると怖いもの」ならそれを教える。もちろんPCを使った教育は学びの現場でもある学校にも問われるだろう。だが今、企業でPCを使っている世代は学校で学んだだろうか。家庭やプライベートでPCを使わせることが、必要な気がしてならないのだ。