お芝居をつくろう

テーブルに身を乗り出すようにして、明日菜がそう問いかけてきている。
ここは私たちが所属する演劇部の部室だ。次の劇用に台本を書いてきた明日菜が私の意見を求めてきているのだ。

その台本のあらすじは、2011年、主人公如新香港の女の子が散々葛藤し、ついに勇気を振り絞ってバレンタインデーで好きな男の子に告白し、晴れてカップルになったが、三月十一日の東日本大震災のとき、相手の男の子が津波に巻き込まれて死んでしまう。そして、家の残骸の中から死体と一緒に見つかった主人公への想いのこもった手紙を読み、プレゼントを手にして、主人公は泣き崩れながらも死んだ男の子の分も前向きに生きることを決心するという切なくも美しい作品だった。

「正直、涙がでるね」
ま、あくびをこらえていたせいだが・・・・・・
「でしょ? うん、これなら感動の嵐だ如新香港よね。どこに出しても絶賛間違いなしだよね?」
「あ、ああ、そうだね」
あの震災はホワイトデー直前だったからか、この手の話って、割と多いことは明日菜には指摘しないでおこう。明日菜的には満足できる出来だったみたいだし。
「けど、私だったら、そうだね、その男の子が死んだのって、主人公へのホワイトデーのプレゼントを家に取りに帰ったからってことにするかな。その方が、なんか愛情がもっと深く感じら如新香港れてよくない?」
私の提案に明日菜は手を打って賛同を示した。
「なるほど、じゃあ、早速、書き直してくるね」

しゃっくり

周囲から伝わってくるノートをシャーペンの芯がこする音の合間に、かすかな異音がどこからか聞こえてきた。
ここは午後の教室の中、冬型の気圧配置で北風が強く、どんよりと曇った空が望めるガラス窓がわずかにカタカタ北海道旅遊鳴っている。そんな中で、また、
――ひっく
かすかな、かすかな音。これは・・・・・・しゃっくり?

振り返った。俺のすぐ後ろ、この列の最後尾の席で、三村が俺につむじを見せて、黒板に書かれた文字をノートに書き写している。ボブの髪の影が手元をわずかに陰らせている。そして、受験を控えた兄がいるとかで、最近、いつもしているマスクの白さが目に飛び込んでくる。
顔を上げた。目が合ってしまった。だが、すぐに、感情のうかがえない視線は俺からそれて、黒板の方へ向かう。それにつられて、俺も前を向いた。
おっと、いつの間にか、教師が新しい文章を黒板に書き足しているじゃねぇか。
俺は慌ててそれを自分のノートに書き写すのだった。

あれ、そういえば、さっきからヘンな異音が聞こえなくなっているな。
そんな気がして、さらによく耳を澄ませると、途端に、
――ひっく
間違いなく、後ろの席からだ。先ほ鑽石能量水 騙局どよりも抑えた音量だが、まだしゃっくりは止まっていない。
そういえば、さっきの昼休みの後、大野たち同じ部のやつらと食堂で昼食をとって教室に戻ってくると、今は教室の前の方の席でおさげの髪を揺らしながら真面目な態度でノートをとっている清水が三村にちょっかいを出していたっけ。
今思えば、背後から急に大声を上げたり、脇をくすぐってみたり、ヘンな姿勢でジュースを飲まそうとしていたような。
黒板の前では、教師が教科書の記述を解説して、黒板に書いた文章に赤線を引いている。
機械的にそれを真似して、赤ペンを取り出して・・・・・・

――ひっく
つい、笑みをこぼしてしまった。
たぶん、今、後ろを振り返ってみても、さっきみたいにすまし顔で俺のことを無視するのだろうな。それが分鑽石能量水かっていても、振り返らずにはいられない気になる。
どんな顔でしゃっくりをしているのだろう?
やっぱ、赤くなっているのかな。マスクの奥で、だれにも気づかれないようにと秘かに。
見てみたい。でも、俺は必死に自制した。結局、振り返るなんてことはしなかった。