アルプスの少女ハイジの影響だろうか?

あのアニメを見たことのある者ならば緑の山肌をみると、それがやわらかな牧草(または草原)だという幻想を抱くのではあるまいか。
実際、牛が放牧されている斜面はそこが牧草に違いないだろう。

だが近寄って見ればわかる。
だいたいがそこはササヤブだったりヨモギだったりアザミだったり、あるいは灌木だったりする。
ハイジのように素足で走るなんてとんでもない。
もし走ろうものならアザミやイバラのトゲがささり、切り株にけつまずき、草に隠れる岩に足をぶつけるに違いない。そして予想以上に急な傾斜を転がり落ちるだろう。
また寝そべろうものなら、数秒以内にアブやブヨが襲来すること請け合いだ。

まったく虫というやつは……
街中、いや川原で遭遇する蚊などかわいいものだ。
山の上では、腐肉にたかるハエのごとくアブが飛び交っている。
血を吸うこの生き物がこうも大量にどうやって山上で棲息できるのか実に不思議である。
腰を下ろせばブヨがこれに混ざる。
目の前を飛蚊症のごとく飛ぶ小さな虫はメマトイというらしい。文字通り目にまとわりつく虫でハエの一種とのことだ。

斜面の草むらのなかにはスズメバチが巣を造っている。
ここへ迂闊に草刈り機を突っ込んだ日には大変だ。
正直、ヒグマよりもスズメバチのほうが厄介だ。
遭遇する頻度が桁違いだし、人間を警戒して逃げるということをしない。
まったく昆虫というやつは、その行動心理が本当にわからない。

もしアブ、ブヨ、ハチの三種の昆虫が山から消えてくれれば、どれほど快適かしれない。