二人の優等生

今書いている作品が終わりましたら、もうそろそろペンを置いてもいいかな、どうせ自己満足にすぎないのだから…などと、思っていましたら、次の作品のプロットが見えてきました。
この意欲があるうち、また原稿用紙にしがみつくことになるでしょう。
それにしても、人の人生とは分からないもので、身近にいる学生時代の友人でも、友として軽い気持ちで、楽しく付き合ってはいますが、昔を振り返り、今を見て、お話を聞いてみなければ分からないものだなあ、としみじみ思います。
Aさんの話は以前にチラッとだけ書いたことがありますから、覚えていらっしゃるマイミクさんにはダブりますが、どうも見過ごしていられない友人です。
中学時代の健康優良児で、勉強もスポーツも性格も誰よりもまさっていました。こちらもまた20歳の時誰よりも早く結婚し、羨望の的だったのです。しかも相手は15歳も年上のイケメン恩師で、彼女が大人になるのを待って結婚したのでしょう。
そこまではよかったのですが、この先生と生徒の関係は生涯消えることはなく、夫の先生が白だと言えば白、黒といえば黒として従わなければならなかったようです。
自分の趣味にはお金をかける夫に、生活費をもらっての日常は苦しかったといいます。子供たちも、父親のスパルタ教育についていける息子と、そうでない息子がいて、夫の死後もその一人をひきこもりにして、彼女が夫の年金で二人分をみているのです。不足分は今でもアルバイトでまかなっているようです。
先日、冷凍庫の食品やいただき物を失礼かと思いつつ、上げたいと電話連絡すると、「食べる物なら何でももらうよ」と喜んできてくれたのです。大きい息子(50さいくらい)がいますと、三度の食事作りはたいへんです。
「あなた、トマト、小さい時から好きだったよね」と、私が思い出を言うと、
「そうでもない。食べるものが家になかったし、一番手に入りやすかったから、畑から盗んでも食べたんだよ」と、返事が返ってきたのです。ショックでした。
「高校も親に行きたいと言えなくて…」と言葉をにごすのです。
その時、私にはピンとくるものがありました。ひょっとしたら、あの先生が…それ以上は私も言えません。

もう一人の優等生Bさんは、華やかに今で言うキャリアウーマンになるのかなと思っていましたら、堅く、平凡な主婦になって、今は近所に住む孫の面倒をみて楽しく生活しているようです。
私も病人の夫を抱えて、苦労はしてきましたが、今は充実した毎日です。どんなに夫に虐げられても自分の道をこつこつ築いてきたのがよかったようです。
次作は、子供たちには父親のニセ介護日記を書き残す母親の話を書くつもりです。
今の作品は、ベッドの夫から昔の恋人探しを頼まれる妻の話です。どちらも実話です。
妻はいつかは復讐するものです。こわいんです。死ぬときは赦せる、というのはウソです。

柳家三三独演会「秋」

柳家三三独演会「秋」
なかのZEROホール

恐らく5,6年ぶりに観てきました同会。
小ホールとはいえ、今回も満員でした。

口開けは市楽さんの新作。
明るく結構ですが、予告通りの緊張感に包まれておりましたな。

さて、師匠。
仲入り前に続けて二席。
浮世床で将棋を指しているふたりの可笑しさと言ったら、師匠の真骨頂ですな。

茶の湯の、皆の一服する様では場内そこかしこで笑いが起きておりました。
ただ、このご隠居が、確信犯なのかそれともとぼけているのか、キャラクターがいまひとつ掴めずにおりました。

仲入り後は、黒の紋付きに様変わりをして、案内通りの「大工調べ」。
欲を言えば、政五郎にはそれなりの迫力が欲しいもの。
それでも四人四様、みな人物が鮮やかに描かれて良かったです。
特に与太郎ね。
この師匠の与太郎は可愛い。
「愛すべき馬鹿」であればあるほど、大家に対する奉行の苦言がより効いてくというものです。
わたしは無知なので、この型がどの一門のものなのか知らないけれど、なぜ政五郎がすぐ八百を出さなかったのかが、昨夜ようやく判りました。

落語会で聴いてはいても、前述のとおり独演会は数年ぶり。
風格が備わり、こうしてじっくり聴くともはや名人上手の大看板ですな。
22時前まで、たっぷりと演じてくれて、久しぶりに「落語を聴いたぁ!」という満足に包まれた会でした。