冗談じゃない

やがて、賑やかな声が、止みドチの声が聞こえてきた。
「入りなさい。」と、王の返事と同時に、部屋の戸が開けられる。
笑顔のウンスが、王のご前にひかえると、王から座るようにと、促され、ウンスは、ヨンの隣に腰かけた。
王は、二人の顔を順番にみながら、ヨンにこう切り出した。
「テジャン。此度の饗宴に医仙の歌を披露して貰いたいのです。」
「殿下。医仙の歌で、ございますか・・・。」
殿下は、ご存知ないとみえる。イムジャの歌・・・慶昌君に歌った・・・歌。
チェヨンは、ほくそ笑んでしまった。
「医仙は、どうですか?承知して貰えますか。」
「はい。王様。ところで、宴会なら・・お酒もでます?」
にこやかな表情の王は、ウンスの問いに、大きく頷くだけの返答を返した。
「医仙は、こう言っています。テジャンも承知してくれますね。」
「はい。殿下の仰せのままに。」
王が席から、離れた。下がってよいということだ。
二人は、王に一礼をし、王のいる部屋を退出したのだった。

長い廊下を典医寺に向かいながら、話す二人の会話は、どこかずれていた。
ヨンは、歌を、慶昌君に歌った歌を思い。
ウンスは、きっとパンソリね。
「イムジャ。あの歌をお歌いになるのですね。」
「ええ。勿論よ。得意だし・・。」
「期待しております。」
ウンスは、ヨンの言葉に???と、思ったが、期待しなさいと、密かに思ったのだった。
チェヨンは、これで医仙に集る悪い虫を、遠ざけてしまえると、思うとなぜか、気持ちが軽くなっていった。
チェヨンは、元からの使臣を迎える饗宴時の警護の準備におわれ、ウンスの護衛を部下に任せるしかない状態だった。
ウンスは、典医寺に、官妓行首のいきなりの訪問を受け、事前にウンスの舞いと歌を聴きたいと請われそして、教房へ連れられ衣装を合わせ、太鼓とパンソリを確認したり、そうするうちに、饗宴の前日を迎えてしまった。

ようやく時間の空いたチェヨンが、典医寺のウンスの部屋を訪ねると、ウンスの部屋の衣桁に派手な、見慣れない衣装が、かけてあった。
なにげなく衣装をみているヨンにウンスは、臆することなく話しだす。
「明日の衣装よ。綺麗でしょ?さすが、妓生の衣装よね、とっても綺麗な色。あなたも、そう思わない?」
キーセン?衣装?・・・イムジャ。野暮用を・・・言い終わらないうちに、ヨンは、ウンスの部屋を飛び出していった。
ほんとに、忙しい人なのね・・・。またね・・・。
ウンスは、走り去るヨンの背中に向かい手を振った。

チェヨンは、皇宮のなかを走った。
叔母を捜して、走り廻っていた。
苛立ちを隠せないヨンは、回廊途中の行灯を何個か蹴りながら、叔母を捜していた。
そして、回廊の端の辺りで、腕をいきなり掴まれた。
叔母は、呆れたようにヨンに対して首を振り、舌打ちをしている。
「この阿呆が!なにをいたしておる。」
「叔母上、医仙のことを、なぜ隠しておった。」
「はあ~。隠すもなにも、なかろう。医仙は、宴でパンソリなるものを披露なさる。」
パンソリ・・・そんなものは、知らぬ。
イムジャは、歌うといった。
パンソリとは、歌なのか?
キーセンの衣装で、せねばならぬものなのか・・・。
「叔母上、止めさせられぬか。」
「無理じゃな。諦めろ。医仙は、大したお方じゃ。歌も舞いもかなりのものじゃ。女楽の行首も賞めておった。高麗一の妓生になれるとな。」

やぎさんゆうびん

久しぶりに「やぎさんゆうびん」を歌ったら、
 歌詞も良いけど 曲もすごく良いと気がついた。

 特に、
 ♫しーっかたがないので おーてがみ かーいた

 の部分。
 元気よく弾むリズムが うれしくなる。

 失敗したくせに、たちまち開き直る勇気が清々しい。
 あっぱれである。
 私なら、まずうろたえる。
 見習いたい。

 今度失敗することがあったら、
 ♫しーっかたがないので
 と歌いながら、さっさと やり直したいものである。

 作曲者は誰だろうと調べたら、團伊玖磨だった。
 「祝典行進曲」は好きだけど、童謡も作ってたんだ。

 まど みちお作詞・團 伊玖磨作曲
 「やぎさんゆうびん」は、名職人たちが作ってたのね。

 パイプがあったら、ゆっくりと煙を くゆらせたいところだわね。