700年前の歯石からDNA採取、歯や骨の25倍も

歯医者にとっては厄介なあるものが、考古学者にとっては喉から手が出るほど貴重なお宝だった。700年前の歯についた歯垢から、研究者たちがDNAを採り出すことに成功したのだ。古代の暮らしを知る手がかりになる。
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 歯石や歯垢、食べかすといった、歯医者がかき落とす固まった歯の汚れには、古代人の歯や骨の25倍ものDNAが含まれている。形質人類学の専門誌『アメリカン・ジャーナル・オブ・フィジカル・アンスロポロジー』に発表された論文の中で、クリスティーナ・ワーリナー氏と共同研究者たちは、歯垢を研究に取り入れた経緯について詳述し、その手法を用いたからこそ、古代世界の情報を収集できたと述べている。

 歯石は、人がまだ生きているうちから歯垢が固まって体の一部になったものだ。初めは、細菌や食べかすが唾液と交じった歯垢の状態。それを歯ブラシやフロスで取り除かないと、唾液に含まれるリン酸カルシウムによって固まり、何層にも重なっていく。琥珀の中の虫のように、細菌や食べ物、ヒトのDNAやタンパク質が歯石には閉じ込められているのだ。
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 ワーリナー氏は、米国イリノイ州のノリスファームズと呼ばれる遺跡で、700年ほど前に埋葬された北米先住民の人骨6体から歯石を採取した。歯石は大半が細菌であるため、含まれている古代のDNAのうち、ヒトのものは1パーセントに満たない。それでも、6体それぞれにミトコンドリア・ゲノムの全配列を決定できるだけのヒトのDNAが含まれていた。分析に必要だった歯石はわずか20ミリグラムだった。

 DNAを抽出する場合、骨の欠片を砕き、粉末にするのが一般的だ。しかし、北米先住民などは、祖先の遺骨や歯を傷つけることを嫌がることが多い。歯石はヒトの組織ではないので、遺体そのものを傷つけずにDNAを取り出すことができ、これまであまり進んでいなかった先住民の研究に新たな道が開けるだろう。