と訝しく思許され

ありふれた間取りのマンションの、小さなダイニングキッチンだ。流しの前は壁で、窓もない。そのどこがいいのかボクにはわからない。一緒に部屋を探した時に、不動産屋さんが推してくれた対面式の明るいキッチンを、「こんなのは絶対にだめ!」と避けたのはカノジョだった。

 キッチンで、カノジョはいつも鼻歌をうたう。それはカノジョのご機嫌を知るバロメーターみたいなもので、ふん、ふふんと聞こえてくればボクは安心する。

 たとえば、先に帰宅したボクがテレビを観ているうちに眠くなってウトウトしているところに、仕事を終えたカノジョが帰って来る。疲れた足取りでテーブルに近づき、ドサッとバッグを置くとひとつため息をついて、ボクが使いっ放しにした食器を流しに運び始める。その音がガチャガチャと不機嫌そうに響くから、しまった、片付けておくんだった……と焦るのだが、カノジョがそれを洗いながら鼻歌をうたうのが聞こえてくれば、ボクはそのままゴロゴロしていられるのだ。

 鼻歌をうたいながら作ってくれれば、どんな料理でも美味しいし、食卓でちょっとした言い争いをしてしまったあとも、洗い物をしているカノジョが鼻歌をうたえばボクはたような気がする。
 時には、なにがそんなに楽しいんだろううこともあったけれど、カノジョの機嫌がいいに越したことはないから、ボクはなにも訊かなかった。

 今もキッチンでカノジョは鼻歌をうたっている。
「ふん、ふふふん……」と、鼻歌をうたいながら包丁を使っている。
 トントン、サクサク、フン、フフフン……

 まてよ。
 鼻歌を歌うのは機嫌のいい時って、決まっているだろうか。
 考えてみればボクは、鼻歌を歌っているときのカノジョの顔を見たことがない。

 もしもカノジョの特技が、
「泣きながらでも怒りながらでも鼻歌が歌えること」だったらどうしよう。

女が立っが見えた

もう何年も手元にあるのだから、勝手に名前をつけちゃおうかな。橙子とか。

 昨日、2ヶ月ぶりに辦公室傢具美容院に行った。
 望んでいた通りに仕上がった。
 それだけで今日は背筋が2センチ位伸びた感じで街を歩いている。いつもよりしっかりメイクもして、脳内を勘違いで満たしていい気分だ。
 
 髪が決まるだけで前向きになれるなら安いもんだ。面倒臭がらずにちゃんとメンテナンスしよう。そして明るい服を着よう。
 
 先日、衣替えのついでに要らない服を選んで袋に入れたら、全部グレー系だった。グレー、グレー、グレー。そういえば中学の時だったか、同級生に「グレ」と呼ばれている女の子がいた。本人の話では「グレイ・ベア」の略だということだったけれど、灰色の韓國 食譜熊と呼ばれるほど強そうな体格ではなかった。一節には「いつもグレてるから」というのがあったけれど、そんなに感じが悪かった記憶もない。明るいというわけでもなかったけれど、話すと面白い子だった。グレ、元気かな。

 夏の日除けのためのゴーヤの苗や、ナスやらなんやら野菜の苗(育てるのは夫だけど)を買って帰るときのこと。駐車場で荷物を入れていると、どこかの車がプァプァッとクラクションを鳴らした。
 
 近くでなにかトラブルでもあったかと見回したけれどそれらしい様子もない。なのにまたしばらくすると、プァプァプァーと鳴らされる。クラクションの音って、それだけで何か不安を煽るが、とりあえずうちの車には関係ないよなと座席に収まって前見たら、斜め前方に駐車している白いバンの運転席に、2歳から3歳くらいの幼て腕を大きく広げ、ハンドルを握っているのが見えた。
 その女の子が面白がって、お腹でクラクションを鳴らしていたのだ。
 
 助手席には誰かが寝ている。チャイルドシートから、その女の子のおねえちゃんかおにいちゃんなんだろう、ぐっ韓國 泡菜すり眠っているようで、動かない頭しか見えない。
 運転席の女の子はハンドルを動かし、お腹でクラクションを鳴らし、さらにはワイパーを動かした。それも、知らずに手が触れて動いたのかと思ったら、しばらくして自分で止めるから驚いた。
 
 車はエンジンがかかったままだ。暑いから車内のエアコンをかけたまま、親は買い物に行ったんだろう。その子も本当は眠っていたのかもしれない。起きて、退屈になって、運転まで来たんだろうか。
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