喜びも悲しみも幾年月

1/10は、朝から、
久留米の石橋美術館に行っていた。
そこで福岡県新春書道展というのがやっていて、
息子のハルが書いた書が展示されていたからだ。
ハルは福岡市教育委員会なんとか賞というのをもらっていた。
前の日、実家で食事をしていて、
「明日、表彰式があるから、
ぴーやん(僕の愛称)も来てくれないかな?」
と言われたのだが、会場に行けば、
前の奥さんに会うかもしれないので、
「なんか面倒くさいんで、
俺は行かなくていいかな?
書いた書は返ってくるんだろ?」と聞いたら、
ハルは淋しそうな顔をして、
「まあ、いいけど」と言った。
ハルには、運動会も、卒業式も、入学式も、
ほとんど行ってやったことがない。
僕のかわりに父がハルのほとんどの行事に出席し、
過剰な枚数の写真を撮ってやり、
ハルのクラスメートの分まで、
プリンターで印刷して毎回ハルに手渡していた。
だからといって、僕が行かなくてもいいというものでもない。
僕は僕なりにできる範囲で、
子供のことを気にかけているつもりだが、
子供が望んでいるものを
全て与えられているわけではないのはわかっている。
ハルは12時に部活のみんなと西鉄久留米駅で待ち合わせて、
それから会場に移動するということだったので、
僕は父と11時に久留米駅で待ち合わせて、
早めに会場に行き、先にハルの書を見て、
ハルが会場に着く頃に、軽く挨拶して、
入れ替わりに帰ることにした。
久留米の駅から石橋美術館までは意外と近く、
タクシーですぐに着いてしまった。
会場もまだガラガラで、ハルの書はすぐに見つかり、
11時30分くらいには、何もすることが無くなった。
父は表彰式が終わるまで会場にいるつもりだから、
僕は「ハルに一目会ったら先に帰るよ」と言って父と別れた。
石橋美術館の周りは公園のようになっている。
僕は噴水のそばのベンチに座って、
これまでの人生を思い返していた。
一時間ほど懺悔の時間が続き、12時20分頃になって、
身体も冷えてきたので、ハルの携帯に電話してみた。
「あ、ぴーやん!!」意外に明るい声であった。
「お前今何してるの?」
「ラーメン屋でみんなと食事してる」
たしかに周りはガヤガヤとしていた。
「もうお前の書は見たから、俺は先に帰ってもいいかな?」
「うん、いいよ」
僕は歩いて久留米の駅に向かった。
なぜなら、このままハルを待って、
バスから降りてくるハルの姿を見たら、
泣いてしまいそうだったからである。