他人のたったひと言で毒親との関係が改善するのか?

歌手の岩崎良美さんが、自身が「毒親育ち」であったことを告白しました。でもある時、夫のひと言がきっかけとなって、親との葛藤が変化し、徐々に関係が改善していったそうです。

毒親と子供との間にある感情的な溝は、非常に深いものです。それが、夫とはいえ他人のたったひと言で埋まることがあるのでしょうか? 前編に引き続き、臨床心理士の玉井仁氏に話を聞きます。
◆毒親との関係が改善する条件

前回、「他人のたったひと言で毒親との関係が改善するのか?」という質問を4つの要素に分解し、(1)他人、(2)ひと言、という2つについて述べました。今回は、残りの(3)毒親、(4)改善という変化2つについて考えてみます。

(3)毒親
ここではあえて、毒親の反対である「良い親」とは何か、少なくとも親ができたほうがよいこととは何か、という視点から考えてみたいと思います。なぜなら、岩崎さんの例に限らず、完璧な親というものはあり得ないからです。

産経新聞の「母親学」というコラムで紹介された一節が、ここで言いたいことにぴったりなので紹介します。

赤ちゃんは『肌』を離さず
幼児は『手』を離さず
小学生は『目』を離さず
思春期は『心』を離さず

「離さず」というキーワードで、うまくまとまっていますよね。私なりに付け加えるとすれば、最後は「成人は『社会』に手放す」になるのかなと思います。

岩崎さんの親がどのような態度で岩崎さんに接していたのかはわかりませんが、多くの毒親がそうであるように、これらのことがうまくできていなかったのではないでしょうか。そうした親子関係は、互いを不健全なかたちに縛りつけ、結果的に「親離れ」や「子離れ」を阻みます。

親離れと子離れ、どちらも難しいことですが、特に異性関係は、親から離れるとてもよいチャンスとなります。岩崎さんも夫との関係によって、自らを縛っていた家族文化から離れることができたのかもしれません。

(4)改善
関係を改善するには、「今までとは異なる視点」を自らの内に持てていることが必要になります。言い換えると「相手とうまくやっていきたい」と思い、行動として実行するには、相手との間で少し隙間、つまり余裕が生じていることが必要なのです。相手との関係に心がとらわれ過ぎて余裕がなると、関係を変えることは難しいからです。

岩崎さんの場合は、夫の存在がその余裕を育ててくれたのだと思います。誰でも、小さいうちは「親に受け入れられないといけない」と思うものです。やがて、「親が受け入れてくれなくても、私のことを受け入れてくれる人がいる」という存在を実感として持てるようになれば、親との関係を変化させていくこともできるようになります。

それは、思春期・反抗期を境として次第に進んでいくものですが、環境や家族文化、個人差などによってさまざまな過程をたどるでしょう。親子の関係を改善するということは、親が子供に対して、そして子供も親に対して、相手を自分と同じように「不完全ながらも、社会にいる大人」として接することができるようになることでもあるのです。

岩崎さんのニュースは、親子の関係改善というテーマを再考するよいきっかけになりました。親子の関係に何らかの違和感や問題を抱えている人は、多いと思います。岩崎さんを含め、そうした人たちの親子関係が良い方向に向かうことを願っています。
紅蜘蛛
紅蜘蛛