微笑む金髪美女の‘の’

トランジットの意味もしらない、捨て身での、ある意味もうもどらなくてもいい……未来がわからない、破滅してしまいたいほどにここではないどこかを求めた、もう20年近く前。私は一人ヨーロッパをさすらう旅に向けて、ロンドンにむけた飛行機にのった。狭い自分の心で堂々めぐりを、これまた狭いエコノミィの座席に身を押し込み、機上の人となっていた。

コーヒーをたっぷり機内でものんだためか、離陸して数時間後、トイレをもよおし、初めて席をたち、母国に帰るような白人の方々が席をうめる座席にふれながら、通路奥のトイレに向かった。
自分の先には落ち着いた大人のファッションのビジネスウーマンが狭い通路を歩んでいた。自分は彼女のあとを続くと、彼女は自分より先にトイレにはいった。わずかに扉をしめる瞬間、こちらをちらりと見て、目があったような気がした。

鍵がロックされるとともに自分はかなりトイレがしたかったため、モゾモゾ、あやしいステップをふみながら、金髪の彼女がロックを解除して出て来るのを待った。

数分後だろう。彼女がフラッシュの轟音を響かせた後、でてきた。彼女はトイレのドアをしめて、こちらに笑顔をつくって、通路を席のほうへと歩みさっていった。まだ童貞だった私はそれだけでドキドキして、カールした金髪の彼女と結婚して、未来を生きていいと思った。

しかしそんな夢見心地はトイレに入った瞬間吹っ飛んだ。自分はトイレの中の光景に、息をのんだ。正確には息をとめた。閉じられた便座の上には立派な、もう少しで‘の’の字がかけそうな便がのっていた。
しりとりでもやりたいのか?私にそのあとに続く言葉を示せとでもいうのか?彼女は‘の’という文字を知ってメッセージを残したのか?私はとにかくおしっこをしたかったので、紙でのの文字を崩してしまうもとって、便器に捨てて流し、ようをたした。
そのあとに待っていた外国人の男性に、私は微笑みのリレーを続けることはできなかった

謎のメッセージを残した彼女の姿を探したがみつけることはできなかった。

もちろんその旅の最大の衝撃はそのトイレの出来事となった。世界には想像をこえた価値観に満ちていること、自分の世界の狭さに気付かせてくれた、あの金髪美女に感謝したい。
魔鬼天使muira puamaII
勃動力三體牛鞭