ライラ王妃は激

「きっと海の怪獣に全員食べられてしまうわ」王妃は沈んだ顔でつけ加えた。「恐ろしい歯で骨までばりばりとかみ砕かれるのよ」
「〈風の海〉には怪獣なんていやしないわ、ライラ」ポルガラはしんぼう強く言った。「わたしたちは行くのよ。とにかく〈エラスタイド〉までにリヴァに着かなくてはならないの」

「あの人たちにわたしは病気で行けないって――死にそうだって言ってくれないこと」ライラ王妃はなおも嘆願した。「もしそれが聞きいれられたら、わたし死んでもいいわ。本当よ、ポルガラ。今すぐこの場で死んでみせるわ。お願いだからあの恐ろしい船に乗るのだけはやめさせてちょうだい」
「まったく何てお馬鹿さんなの」ポルガラは厳しい声でたしなめた。「あなたはそうするしかないのよ――いいえ、わたしたちだって同じことだわ。あなたとフルラク王とセリネとブレンディグはわたしたちと一緒にリヴァに行かなければならない運命なのよ。すべてはわたしたちが生まれるはるか前に決められていたことなんですからね。さあ、もういいかげんに馬鹿なまねはやめて支度するのよ」
「いやよ!」王妃はすすり泣いて椅子に身を投げ出した。
 ポルガラはあわれみに満ちた共感をこめて半狂乱の王妃を見つめたが、声にはそんな痕跡はみじんも残っていなかった。「ライラ、起きなさい!」彼女は鋭い声で命じた。「立ちあがってさっさと荷づくりをなさい。あなたはリヴァへ行くのよ。たとえあなたを引きずってマストに縛りつけてでも連れていきますからね」
「やめて! そんなこと」しくあえいだ。まるでバケツ一杯の冷水につけられたように、彼女のヒステリーはおさまった。「お願いだからそんなひどいことはしないでちょうだい、ポルガラ」
「さあ、どうしようかしらね」ポルガラは言った。「とりあえずは今すぐに旅の支度をした方がいいと思うわ」
 王妃は弱々しく立ち上がった。「わたしきっとひどい船酔いにかかるわ」
「それであなたの気がおさまるのなら、どうぞご自由に」ポルガラはにこやかにそう言うと、ぽってりした小さな王妃のほおをやさしくなでた。

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