かれの耳を歓喜の凱歌で満た

「ひたすらそれを念じていれば大丈夫さ」
 大方の賛同のもとに、ガリオンとセ?ネドラの結婚式はウルゴのゴリムの手によって行なわれることになった。きゃしゃな聖人はプロルグからセンダリアまで輿で担がれてゆっくりと進み、センダーからはフルラク王専用の馬車に乗り、さらにリヴァまで船で運ばれた。ウルゴの神が神々の父だったという事実は聖職界に大きな衝撃を呼び起こしていた。従来の哲学的考察を記した膨大な書物はまったくの紙屑となりはて、僧侶たちはショックのあまり右往左往しているありさまだった。特に熊神ベラーに仕えるプロデグはそれを聞いたとたん、死んだように失神してしまった。タール?マードゥでの痛手で不具者となり、まだ十分に回復していなかったこの巨人の聖職者は、今回の致命的な一撃を持ちこたえることができなかった。かれがようやく目覚めたとき、その従者たちは高僧の心が子供のそれに退化してしまったことを知った。今やかれは玩具やさまざまな色の遊びひもに囲まれて日々を過ごしていた。
 ガリオンの結婚式はむろん〈リヴァ王の広間〉で行なわれることになっており、すでにほとんどの列席者たちが集まっていた。ローダー王は深紅色、アンヘグ王は青色、フルラク王は茶色、そしてチョ?ハグ王はアルガーの諸氏族の伝統にのっとって黒をまとっていた。末息子の戦死以来、ますますその表情がいかめしくなった〈リヴァの番人〉は、リヴァ特有の灰色の衣を身につけていた。王室関係の賓客はそれだけではなかった。黄金色のマントをつけたラン?ボルーン二十三世は異様なまでに陽気で、頭をそった宦官のサディと何やら談笑しあっていた。不思議なことにこの二人はすっかり意気投合したようすだった。西の諸国の新情勢がもたらす可能性が両者をひきつけ、何らかの了解をもたらしたようだった。コロダリン王は青紫色の衣をまとって他の諸王らと一緒にいたが、あまり口を開くことはなかった。タール?マードゥの戦いで受けた頭の傷がもとで聴力に異常をきたしたアレンディアの若い王は、あきらかに居心地の悪い思いをしているようだった。
 王族たちの集う中央にガール?オグ?ナドラクのドロスタ?レク?タン王の姿があった。王はおよそ似合わない奇妙な黄色の胴衣を身につけていた。ひょろ長い神経質なナドラク王は、わめき散らすようにしゃべり、笑うたびに金切り声をあげた。ドロスタ王はその午後だけで多くの申し合わせを行なったようだった。そのなかのいくつかは、かれが特に強く望んだものだった。
 むろんリヴァ王ベルガリオンはかれらの談笑に加わることはなかった。だがこれはむしろかれにとっては幸いだったかもしれない。それというのもリヴァ王の精神状態はいささか普通ではなかったからである。上から下まで青ずくめの格好をしたガリオンは、控え室でうろうろと歩きまわっていた。かれとレルドリンは二人を大広間に召喚するファンファーレを今か今かと待ち受けていたのである。「さっさと終わってくれればいいのに」ガリオンがその言葉を発するのはこれで六回目だった。
「いいから、落ちつきたまえ、ガリオン」レルドリンもまた同じ慰め言葉を繰り返していた。
「いったいみんな、何をやっているんだ」
「たぶん、王女の支度が整うまで待っているんだろう。何といってもこういった場所では花嫁の方が主役だからね。結婚式とはそういうものさ」
「きみは本当に幸運な男だよ。きみとアリアナは駆け落ちして、こんな騒ぎを味わわずにすんだのだから」
 レルドリンは悲しげに笑った。「それがそうもいかないんだよ、ガリオン。われわれは単にそれを延期しただけのことさ。ここでの結婚準備の騒ぎにアリアナもすっかり感化を受けてしまってね。アレンディアに戻りしだい、ちゃんとした式をあげたいと言い出したのさ」
「まったく何で女性は結婚式というものに影響を受けるんだろうね」
「さあね」レルドリンは肩をすくめてみせた。「女心というのは不思議なものさ。きみもすぐにわかるだろうがね」
 ガリオンはむっつりと友人をにらみ、再び王冠の位置をなおした。「とにかくさっさと終わってくれればいいのに」かれは同じ言葉を繰り返した。
 ファンファーレが〈リヴァ王の広間〉いっぱいに響きわたると同時にドアが開いた。ガリオンははた目から見てもわかるほど震える手で、王冠を再度なおすと、かれの花嫁となる女性に会うために一歩を踏み出した。まわりにいるのは見知った顔ばかりだというのに、ガリオンのぼうっとした目はほとんど見分けがつかなかった。かれとレルドリンは火穴で燃えさかる泥炭の炎のわきをとおり、玉座に向かって歩いていった。玉座の壁には再びかれの巨大な剣がかかり、そのつか[#「つか」に傍点]頭には〈アルダーの珠〉が輝いていた。
 装飾用の垂れ布や旗が広間を飾り、あたり一面は春の花の香りに満ちあふれていた。絹やサテンや色とりどりのブロケードなどをまとった列席者がいっせいに花婿の姿を見ようと身をよじる姿はそれだけで春の花園のようにきらびやかだった。
 玉座の前で二人を待ち受けているのは、穏やかな顔にほほ笑みを浮かべたウルゴのゴリムだった。「おめでとう、ガリオン」ゴリムは玉座へ続く階段をのぼり始めたガリオンに呼びかけた。
「ありがとうございます、聖なるゴリム」ガリオンは不安げなおももちで身をかがめた。
「落ちつきなさい、わが息子よ」ガリオンの震える手に気づいたゴリムが忠告した。
「自分でもそうしているつもりなんです、聖なるお方よ」
 すると真鍮のホルンが再びファンファーレを轟かせた。そして広間のドアがさっと大きく開かれた。帝国の王女セ?ネドラが真珠をちりばめたクリーム色の花嫁衣装をまとい、いとこのゼラにつき添われて立っていた。彼女は驚くほど美しかった。燃えるような髪をガウンの肩に波打たせ、お気にいりの極彩色の入った黄金色の頭飾りをはめていた。その顔には取り澄ましたような表情が浮かび、かすかに頬を赤く染めていた。彼女は終始目を伏せていたが、何かの拍子で二人の目があった瞬間、ガリオンは長いまつ毛の下の瞳がいたずらっぽくきらめくのを見た。そのとたんかれは彼女の取り澄ました表情が作り物であることを確信した。彼女は列席者に自分の美しさを存分に鑑賞させるためにしばらく立ち止まった後、滝のように流れ落ちる優しいハープの調べとともに、がたがた震える花婿に向かって通路を進んできた。バラクの二人の幼い娘たちが、花嫁のすぐ前を歩いて、通路に花をまき散らすのを見たガリオンはいささかやりすぎではないかと思った。
 台座の前に近づいたセ?ネドラは、衝動的ともいえる動作で優しいゴリムのほおにキスすると、ガリオンのかたわらに座った。彼女の体から花のようなよい匂いが漂ってきた。どういうわけかガリオンはそれを嗅いだとたん、ひざが震え出した。
 ゴリムが列席者を前にして話しはじめた。「今日ここにお集まりいただいたのは、ひとえにわれわれをいくたの恐るべき危険から救い、この幸せな日へと導いてきた〈予言〉の最後の部分が明らかになるのをご一緒に目撃するためであります。かつて語られたとおり、リヴァ王の帰還は果たされました。かれはいにしえの仇敵と対決し、勝利をおさめたのです。今、かれの横で美しく光輝いておりますのがその褒賞であります」
 褒賞だって? かれは今まで一度もそんなふうに考えたことはなかった。かれはゴリムの声を聞きながら、そのことについて思い巡らしたが、たいした助けにはならなかった。そのとたん、かれは脇腹を小突かれた。
「ちゃんと聞いてらっしゃいよ」セ?ネドラが小声で注意した。
 それからすぐに式は質問と答えのやりとりにうつった。ガリオンの声はかすかにしわがれていたが、それは当然のことと言えた。だがセ?ネドラの声はよどみなくしっかりしていた。せめて不安そうなふりをすることくらいできないのだろうかとガリオンは思わずにいられなかった。
 二人が交換する指輪を載せた小さなビロードのクッションをエランドが運んできた。子供は真剣に自分の務めを果たしていたようだが、その小さな顔にさえかすかにおもしろがっているような表情が浮かんでいた。ガリオンは心ひそかに憤慨した。まったく誰もかれもがかれをこっそり笑っているのではないか?
 結婚式はゴリムの祝福で終わったが、ガリオンの耳にはまったく入らなかった。かれが祝福を受けているあいだ、〈アルダーの珠〉が耐えがたい押しつけがましさで、し独自の祝福をしていたのである。
 セ?ネドラがかれの方を向いた。「さあ、早く」彼女は小声でうながした。
「何をするんだい?」かれもまた小声で聞き返した。
「わたしにキスしてくれないの?」
「ここで? こんな公衆の面前でやれというのかい」
「それが習慣なのよ」
「馬鹿げた習慣だ」
「いいから、早くやってちょうだい、ガリオン」彼女ははげますような暖かい微笑を送った。

た方がよかったんじゃ

女魔術師は天幕のなかを一瞥すると、タイバとアダーラに泣きじゃくる少女と二人だけにしてほしいむねを伝えた。「さあさあ、セ?ネドラ」彼女はベッドに腰かけ、小さな王女をかき抱いた。「いったいどうしたというの」
「レディ?ポルガラ、わたしもう免疫系統これ以上できないわ」セ?ネドラは泣き叫んだ。「もう嫌よ」
「でもこれはそもそもあなたの考えだしたことだったのよ」ポルガラが思いださせるように言った。
「わたしが間違ってたわ」セ?ネドラは泣きじゃくった。「わたしが間違ってたのよ! あのままリヴァに残っていればよかったんだわ」
「いいえ、それは違うわ」ポルガ免疫系統ラは言った。「あなたは誰にもできないことをやってのけたのよ。あなたはアレンド人を味方につけてくれたわ。ガリオンだってそこまではできなかったでしょう」
「でもみんな死ぬんだわ!」セ?ネドラは泣きわめいた。
「何だってそんなことを言うの」
「アンガラクの軍隊はわたしたちの二倍もいるのよ。わたしの軍隊は一人残らず殺されてしまうわ」
「誰がそんなことを言ったの」
「わたし――わたし、聞いてしまったの」セ?ネドラはのどもとの護符をまさぐりながら答えた。「ローダーとア免疫系統ンヘグと他の人たちが南マーゴの報告を受けているところを」
「なるほどね」ポルガラが重々しく言った。
「わたしたちはむざむざ死ににいくんですって。誰もわたしたちを助けられないのよ。おまけにわたしは農奴たちまで味方につける方法を見つけたのよ。あの人たちの生活はあまりに惨めなので、ちゃんと食べられさえすればどこへでもついてくるんですって。でもわたしはやるしかないの。かれらの協力を得るということは、かれらを故郷の地から連れだして、わざわざ死地におもむかせることなのよ。もうどうにも止めようがないんだわ」
 ポルガラはかたわらのテーブルからコップを取り上げると、小さな薬瓶の液体をあけた。
「セ?ネドラ、まだ戦争は終わったわけじゃないわ。それどころか始まってさえいないのよ」彼女はそう言いながらコップの底の濃いこはく色の液体をかきまぜた。「わたしはこれまでにももっと不利な戦争が勝つのを見てきたわ。始まる前から悲観していたのでは、どうしようもないでしょう。ローダーはあのとおりの優れた策士だし、あなたの軍隊にはたいそう勇敢な兵士がそろっているわ。むろんわたしたちはどうしても必要なとき以外、むやみに戦いを始めたりはしないわ。その前にガリオンがトラクに出会ってかれを倒すことができれば、アンガラクは総崩れになるでしょうから、まったく戦争をする必要もなくなるのよ。さあ、これをお飲みなさい」そう言いながら彼女はセ?ネドラにコップをさしだした。
 王女はのろのろとコップを受け取り、飲みほした。こはく色の液体は苦く、ぴりっとした不思議な後味を残した。「それじゃ、全部ガリオンの肩にかかっていたのね」
「いつだってかれの肩にかかっていたのよ」ポルガラが言った。
 セ?ネドラはため息をついた。「わたし――」と言いかけて彼女は言葉をとぎらせた。
「なあに、セ?ネドラ」
「ああ、レディ?ポルガラ。わたしはまだガリオンに愛してるって言ってないのよ。一回でもいいから愛してるって言うためなら、わたし何だってするのに」
「かれはちゃんとわかってるわよ、セ?ネドラ」
「でも言葉に出していうのとは違うわ」彼女は再びため息をついた。不思議なけだるさが体をみたし始めていた。彼女は泣くのをやめた。もはや自分が何のために泣いていたのかさえ覚えてはいなかった。突然、彼女は誰かに見つめられているような気がして振り返った。天幕の片すみにエランドが静かに座って彼女を見つめていた。その深い青色の目には心からの慰めと奇妙な希望が入りまじっていた。ポルガラは再び王女を胸に抱きしめるとゆっくり前後に体を揺すりはじめた。彼女はかすかに心をいやすようなメロディーを口ずさんだ。セ?ネドラはいつしか夢も見ずに深い眠りにおちいっていた。
 セ?ネドラの生命を脅かす企てが行なわれたのは翌日の朝のことだった。一行はボー?ワキューンから南に向かい、陽がさんさんとさしこむ〈北の大街道〉の森を進軍していた。王女は軍隊の先頭にたってバラクやマンドラレンとおしゃべりをしていた。突然、森の彼方からぶーんという不吉な音とともに矢が飛んできた。音に気づいたバラクはとっさに警告を発した。
「危ない!」かれは叫ぶと巨大な盾で王女をかばった。次の瞬間、矢が盾に激突した。バラクは罵り声をあげて剣を抜いた。
 だがそれより早くブランドの末子、オルバンが一直線に森の中に突っ込んでいった。若者の顔は死人のように蒼白で、剣はまるでさやから飛び出てきたようにかれの手にあらわれた。疾走する馬のひづめの音が次第に遠くなり、森の中に消えた。しばらくしてから恐ろしい悲鳴が響いた。
 背後から次々に警告の叫び声が起こり、動揺したざわめきが広がった。ポルガラが蒼白な顔をして駆けつけた。
「わたしは大丈夫よ、レディ?ポルガラ」セ?ネドラは急いで言った。「バラクがわたしを助けてくれたの」
「いったい何があったの」ポルガラが聞きただした。
「何者かが王女に矢を射かけたんですよ」バラクが怒ったような口調で答えた。「もしおれが音に気づかなければ大変なことになるところだった」
 レルドリンは折れた矢を拾いあげると、しげしげと観察した。「矢羽がゆるんでいる」そう言いながらかれは指先で羽をなでた。「だからあんな音がしたんだな」
 そこへオルバンが血まみれの剣を掲げたまま馬を走らせてきた。「王妃はご無事か」かれの声はヒステリー寸前だった。
「大丈夫だ」バラクは若者にもの問いたげな視線をおくった。「犯人の正体は?」
「マーゴ人ですね、たぶん」かれは答えた。「ほおに傷あとがありましたから」
「殺したのかい」
 オルバンはうなずいた。「本当に何ともないのですか、女王さま」白っぽい金髪を乱した若者はたいそう若く、真摯に見えた。
「大丈夫よ、オルバン。あなたはとても勇敢な方ね。でもあんなふうに一人で飛び出す前に少し待っなくって。相手は一人とは限らないのよ」
「だったらそいつら全員を殺してやりますよ」オルバンは殺気だった口調で言った。「あなたに指一本でもたてるようなやつがいたら絶対に容赦しません」若者は怒りにわなわな震えていた。
「若きオルバン卿よ、まことに似つかわしき献身ですそ」マンドラレンが言った。

て王さまになるんだ

「信用したまえ」ミスター?ウルフは言った。
「ありがとうございます」ブレンディグは軽く頭をさげた。「この宿屋のまわりに見張りを配置せざるをえないこともご承知おきください――むろん、保護のためです」
「お心づかい痛みいりますわ」ポルおばさんはそっけなく言った。
「おそれいります」ブレンディグは形式ばったお辞儀をすると、きびすを返して出ていった。
 磨きあげたドアはただの木だった。それはわかっていたが、ブレンディグの背後でドアがしまったとき、ガリオンに乳鐵蛋白はそれが牢屋のドアのあのぞっとする決定的な響きを持っているような気がした。
カマールからセンダリアの都へ至る海岸道路をかれらは九日がかりで進んだが、距離にすればそれはわずか五十五リーグにすぎなかった。ブレンディグ連隊長のペース配分が慎重なのと、彼の率いる分遣隊が逃亡を考えることもできないような方法で配列されていたため、そんなに日数がかかったのである。雪はやんでいたが、あいかわらず道は悪く、沖合から吹きつけて雪に埋もれた広い塩性湿地をわたる風は凍てつくように冷たかった。長くのびた無人の海岸ぞいにセンダリアの宿屋が里程標よろしく等間隔で建っていて、かれらは夜が訪れるたびそれらの宿に泊った。〈北の大街道〉ぞいにあるトルネドラの旅館にくらべるとやや見劣りしたが、必要を満たすことはできた。ブレンディグ連隊長はかれらが快適であるよう気を配っているようだったが、毎晩見張りをおくことも怠らなか免疫系統った。
 二日めの夜、ガリオンはダーニクとともに暖炉のそばに坐って憂欝そうに炎をじっと見ていた。ダーニクはもっとも古い友人であり、そのときのガリオンは無性に友情がほしい気分だった。
「ダーニク」かれはとうとう言った。
「なんだね?」
「牢屋にはいったことある?」
「牢屋に入れられるようなことをわたしがすると思うのか?」
「見たことぐらいあるかと思ったんだ」
「正直者はそんなところへは近寄ら更年期中醫ないよ」
「いやなところなんだってね――暗くて寒くてネズミがいっぱいいて」
「どうして牢屋の話などするんだね?」
「もうじきそういう場所に詳しくなるんじゃないかと思ってさ」ガリオンはつとめて平気な口ぶりで言った。
「われわれは悪いことはなにもしていない」
「じゃあどうして王さまはこんなふうにぼくたちをつかまえたんだろう? ちゃんとした理由がなければこんなことしないよ」
「われわれは悪いことはなにひとつしていない」ダーニクはかたくなにくり返した。
「でもミスター?ウルフがしたかもしれない」ガリオンはほのめかした。「なにか理由がなけりゃ、王さまがこれだけの兵隊を送りこんでミスター?ウルフを追跡させるわけがないんだ――そしてたまたま仲間だというだけでぼくたち全員投獄されてしまうのかもしれないよ」
「センダリアではそんなことは起こらない」ダーニクはきっぱり言った。
 翌日、沖合からすさまじい烈風が吹きつけてきたが、それはなまあたたかく、足首まで埋まる路上の雪がぬかるみはじめた。昼には雨がふりだした。かれらはずぶぬれになって次の宿屋へ向かった。
「この強風が静まるまで先へ進むのは見合わせなくてはならないようだ」その夜ブレンディグ連隊長は宿屋の小窓の外を見ながら言った。「道路は朝には通行不可能な状態になっているだろう」
 翌日もその次の日も、かれらは宿屋の狭い主室に腰をおろして、壁や屋根にたたきつけられる雨の音を聞きながら時間をすごした。その間ずっと、ブレンディグとその兵隊の監視の目が光っていた。
 二日め、ガリオンは腰かけの上でうとうとしているネズミ顔の小男に近づいて、声をかけた。
「シルク」
「なんだ、ガリオン?」シルクは目をさまして訊いた。
「王さまってどんな人?」
「どの王だ?」
「センダリアの王さまだよ」
「愚かな男さ――王のごたぶんにもれず」シルクは笑った。「センダリアの王たちは他の王より愚かしさの度合いがいくぶん強いかもしれないが、それにしたところでごくあたりまえのことだ。なぜそんなことを訊く?」
「うん――」ガリオンはためらった。「だれかが王さまの気に入らないことをしたと仮定するでしょう、ところがほかにも一緒に旅をしている者がいて、その人たちまでつかまった場合、王さまは全員牢屋に入れちゃうのかな? それとも他のみんなは放免されて、王さまを怒らせた人だけが投獄されるのかな?」
 シルクはまじまじとガリオンを見たあと、きっぱりと言った。「きみらしくもない質問だぞ、ガリオン」
 ガリオンは赤くなり、きゅうに穴があったらはいりたいような気持になって、小さな声で言った。「ぼく牢屋がこわいんだ。理由もわからないで、永久に暗闇に閉じこめられたくないんだ」
「センダリアの王たちは公正で正直な連中だよ」シルクは言いきかせた。「とびきり頭がいいわけじゃないが、公明正大なんだ」
「頭がよくなくて、どうして王さまになれるの?」ガリオンは反論した。
「知恵は王には有益な資質だが、絶対必要なものじゃない」
「それじゃ、王さまたちはどうやっろう?」
「ある者は生まれついての王なんだ。世界一の愚か者でも、しかるべき両親がいれば王になれる。センダリアの王たちはその点不利だ。出身がいやしいからな」
「いやしいって?」
「かれらは選出されたのさ。王を選ぶなんてことは今までだれもしなかった――センダー人だけがやったことさ」
「どうやって選ぶの?」

になる議な笑い方

パイロットだった。文字通り鳥瞰目線。リムジーンドライバー目線もあるのだぞ。
昨晩というのか今朝というのか、午前零時過ぎに帰宅。三十分、ぼーとビール。寝る。午前三時十五分、起床。ほとんど寝てSCOTT 咖啡機いない。仕事。ガレージで車の掃除を終了したのが、午前七時。普通なら、八時半には家に着いている。本格的二度寝の予定。地下鉄、郊外線、最寄り駅、下りる。電車がない。また、地下鉄に乗り、サンラザール駅へ。ホームを出る電車の後姿に紙テープ。疲労タイタニック。次の電車、二時間後。そう、フランス名物、国鉄ストなのだ。寒波、霙の中。こちらは、ほとんど寝ていない。倒れそうになる。急に顔がダニエルクレイグ。一昨日、カバンの取っ手に結んでいた折り畳み傘をどこかで落としている。こういうチョンボは滅多にしないけれど、やはり、疲れている。

道筋を戻る。当然、拾われて、持って行かSCOTT 咖啡機れている。フランスで、一旦、体から離れたものが戻ることはないのだ。カミサンもね。そうすると、算数的乗り継ぎ帰宅になる。段々、雨土砂降り。帰宅駅からの道筋を考えると、その合間にどこかで傘を買わなければならない。コンビニなんちゅうものはない。早朝、開いている店もない。どこで調達するのか? しかも、安物買いのなんとかで、フランスの安傘は三回差すとアウト。私は嫌いなのだ、こういうのは。多少、高くても、何年か持つものを買いたい。算数的乗換えの合間に、開いているスーパーを見付ける。「雨と共に生きる」という赤いロゴの入った傘を購入。赤い文字のデザインが女性的でちょっと気になる。

おかまに間違えられるし口説かれる可能性が高まる。おかまに他意はないけれど、こちらは寝ていないから女性でさえしんどいのに。しかし、傘はとてもいい出来。気に入る。と、駅に着いて、土砂降りの中買い物して帰宅して一時間半寝て昼食風呂ピアノブログ料理と俺はピカソかよぉーと思いつつこの異常な高年エネルギーはなんなSCOTT 咖啡機のだぁーとも思うけれど来週のコンサート大先輩三人に羽交い絞めやばいから練習せんといかんのだうで海鮮カレーを食べてトゥルルさまーず見て寝るのだけれどあびるはなんか諸フランス女してしいる。同性の好感度は低いだろうけれど俺は好きだなこういう感じ自由感と衒いがないいいナオンだ、ジャズってる彼女。大竹さんと三村さんはタレ目涙目でいつも見ている。大ファンである。

イトルを括弧付けしたのは、ワールドオーダーの曲名だからである。昨晩、久しぶりに彼らのチャンネルを覗いた。当然にして素朴な疑問。「あれっ、工藤さんは?」。インターネットで理由を調べた。彼は本当にすごい人だ。この決断力は半端ではないと思う。潔さの極致。格闘家の歴史の重みも感じる。「引退の時期」という宿命を。

タイトルを私なりに訳してみると「次の局面」という感じかな、と思う。当然にして、私が今日、記事を書く意味を問われる。

一日中、震災のことを考えていた。五年という月日のことも。そもそも、私が高年プータ
ローと化したのも震災なのである。フランスの日系企業の重責というポスト。私の二十四年間が問われた。お前、そんなことしにフランスに来たの? 当然、ノンである。震災が私に問い掛ける。心の復興はないと。一度折れたものは元には戻らない。

ども徐々に

が残っていることだと思うが『恋は美しく輝くもの』サミー?フェインの楽曲とともに画面一杯に広がって美しく??涙を誘う回想のシーンで物語は終わる。「麗しのサブリナ」や「終着駅」などオ個人化護膚スカー俳優の二人が共演した作品は多いが『慕情』の香港ロケに向う途中、二人は日本にも立ち寄った記録があった。1955年1月30日とある。日本で『慕情』が公開されたのはその翌年4月のことであった。


角帽を被った一年生の私は愛を育んでいたデパート?ガールの彼女と『慕情』を鑑賞していた。

香港島、ビクトリアピークの回想場面で隣席の彼女は手にするハンカチを握り締め時折目頭を拭っている様子だ。音響がシネ護膚品個人化マスコープのスクリーン一杯に拡がるラストシーン??物語の終わりを告げるテロップが画面の下に流れる???


画面に思いを重ね私の左手はそっと彼女の右手に触れる。そして力強くその手を握り締めた。彼女もそれに応える。人前では堂々と手を繋いでなど歩けなかった昭和の青春であった。


時は流れて??我が家族、妻とは何度も香港を旅した。幾度となくビクトリアピークに登り記念写真にも納まったが『映画慕情』の昔話を妻には一度も話した記憶が無い。何故だったんだろう?気遣いか???妻が逝ってしまった今頃になって遠い昔に思いを巡らせる慕情の風景??懐かしいサウンドである。客商売をしていると日常の挨拶で『旦那は改善膚質お元気そうですね、具合の悪いところは無いのですか?』と良く訊かれる。そんな時「頭と懐具合が悪くて苦労します(笑)?と談笑に替える私だったが年齢と共に近頃はそんな冗句が言えなくなった。


医薬には頼らず少々の苦痛なら自力(我慢)でその場を逃れてきた男にも泣き所があって五十代の中頃からは歯科医に通い続ける私である。20年以上も前に施術した金冠や部分入れ歯な維持が困難になり、そろそろ全面改装を覚悟しなければならない時機の到来だという。長年の喫煙による不摂生が原因だとされ、言わずもがな犯人は自身の不摂生にあった。