たった一つの顔

電話がかかってきた時、男と一緒やった

ー病院行くから、帰って
『ん?』
ー親父、危篤やって
『…分かった。近く?』
ーううん、電車
『駅まで送るわ』
ーいけるよ
『えーから』

無言のまま、駅に着いた
ーありがと
『連絡してこいや』
ー…ん
『早よ行け』
ーん
歩き出したら、声をかけられた
『おい!』
ーん?
『…看取ったれよ』
ー…ありがと

病室に入ると、もぅ全員 おった
別に暮らしてる妹や弟ら
親父の兄弟や その嫁や従兄弟まで、全員
…ウチが、最後か…
そう思いながら、親父を見た

機械と管に繋がれてる親父は、どう見ても 生きてるようには思えんかった
古書に描かれてる 餓鬼を、連想した
全身ガリガリで 腹だけ異様に膨らんでる姿が、腹水が溜まり 骨と皮だけの親父と重なる
食い尽くす餓鬼が、消えへんかった

近づきもせず、そのまま病室を出た
伯父が出てきて、言う
「父親捨てて 家出て、えー気なもんや」
「お前のせいや」
「親ごろしが」

叫びたかった
三体牛鞭
勃動力三體牛鞭
蟻力神